更新日 : 2013-05-25 07:48:22

山火事のときに飛んでくる甲虫の赤外線受容器

なにがすごいの?

カブトムシやタマムシなど外骨格が丈夫そうに見える昆虫類を甲虫と呼んでいます。
甲虫の中でも昔から存在していると言われているのがナガヒラタムシの仲間で世界中に生息しています。
ナガヒラタムシの成虫は山火事が起きると50kmも離れた場所から飛んできて、まだ火がくすぶっている森で交尾をし、火事で焼けた木の樹皮の下に産卵します。
その結果、ナガヒラタムシの幼虫は孵化したあとに樹液に流される心配もなく、自由に木の栄養分を餌にすることができます。

成虫になると、また山火事の起きた場所を感知して飛び立っていき、次の世代が始まります。
遠くから山火事を感知し、飛んでくるナガヒラタムシには山火事で大量に放射される赤外線に反応する特別な感覚器官がついているのです。

どうやって役立てるの?

山火事の発生を早い段階で発見できる警報システムに役立てることができるかもしれません。
大きな建物内の火災報知器としても役立てることができそうです。

どんな研究をしているの?

ナガヒラタムシの赤外線受容器官は胸部や脚の付け根の「くぼみ」に見える部分にあり、その中には50から100個もの小さな球体が集まっています。
この球体の内部は液体で満たされて感覚神経がつながった細胞が集まっています。
火事によって放出された赤外線を感知すると、この器官が膨らみ、神経細胞につながった突起が曲がることで、神経が刺激されナガヒラタムシの脳に火事が起こったことを伝達します。

この赤外線受容器官は、赤外線が証左されてからわずか数ミリ秒(1000分の1秒)という短い時間で反応することが実験によって分かりました。

また赤外線受容器官に含まれる球体は、炭素―水素結合、酸素―水素結合を多く含んだ「クチクラ」という物質でできていて、これらの結合は火事で放出される赤外線の波長(およそ3マイクロメートル)によって選択的に振動することが分かりました。

どんな技術開発ができるの?

現在よりも火災が起きてから、早い段階で遠くから火災を感知できる火災報知器の開発が期待されます。
またナガヒラタムシの赤外線感知の方法は冷却する必要がないので、高性能で小型な赤外線センサーの開発にも応用できる可能性があります。

【参考】
・S. Schmitz, et al., Insect antenna as a smoke detector. Nature, 398, 298-299.
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