更新日 : 2013-09-02 09:03:46

風がなくても飛べるアルソミトラの種子

なにがすごいの?

アルソミトラの種子
(C) Kouji Takido
高い木に絡んで成長するつる性の植物アルソミトラ・マクロカルパは、熱帯アジアの島々に生息しています。
この植物は、私たちの頭がすっぽりと入るヘルメットのような大きな果実を付けます。
1つの果実の中に入っている種子の数は、なんと約400個!

この種子を出来るだけ広い範囲に散らばせるために、種子はブーメランのような形をしており、空中を掴んで遠くまで運ばれます。
また、ひとつずつ形が完璧に同じではないので、飛び方も微妙に違ってきます。
そのため、これらの種子は色々な場所に落ちていき次の世代が広範囲で育っていくのです。

マツやカエデの種子は、風を使って回転しながら真下に落下します。
しかし、熱帯雨林に生息するアルソミトラは風を待つことはできません。
風を使わずに、絡みついた高い木からグライダーのように飛んで、種子を遠くに飛ばします。
熱帯雨林にはたくさんの木が密集しているので、風が少ないからです。
アルソミトラは木に絡みつき、高いところからグライダーのように飛ぶことでより遠くに種子を飛ばすことを可能としました。

また熱帯では上昇気流があるので、それに乗ってさらに遠くまで仲間を広げる仕組みにもなっているのです。

どうやって役立てるの?

このアルソミトラという植物の種子の形は、空を飛ぶのにとても適しています。
種子の構造を取り入れ、新しい乗り物として役立てるかもしれません。

どんな研究をしているの?

実際に、アルソミトラの種子がどのように飛ぶのかについて観察されています。
50メートルの高さから落下して、1キロメートルも飛んだという調査結果もあります。

滑空比と呼ばれる、落下に対する滑空距離が4:1であること分かりました。
つまり1メートル落下するごとに、4メートル滑空することになります。
風があればさらに遠くへ飛ぶことができるのです。

このアルソミトラの種子の翼をヒントに、安定した翼の飛行機の平面図が作られています。
ちょうどライト兄弟が世界初の人を乗せた飛行を成功させたころ、オーストリアの設計者イグナティウスとその息子イゴの二人は自然をヒントに飛行機を飛ばせないかと考えました。

そしてイゴはアルソミトラ・マクロカルパの種子の滑空に関する論文を目にし、人が乗ることのできるアルソミトラ型グライダーを造り飛行に成功させました。
このようにして完成した飛行機は、どちらかというと鳥に似た姿となり、「タウベ(Taube)」と名付けられました。
タウベはドイツ語で「ハト」という意味です。

おなじみのハングライダーや現在最も進歩したステルス戦闘機も空気抵抗の少ない、アルソミトラの種子の原理をヒントに造られました。

どんな技術開発ができるの?

アルソミトラの種子から作成した飛行機の安全性を高めることができれば、新しい形の航空機として活躍できるかもしれません。

また高層オフィスで地震が起きた場合、このアルソミトラの種子型の飛行機で私たちも空を飛んで災害から身を守ることができるかもしれません。

教育用の作成キットがあり、アルソミトラの種子の小さな模型を飛ばして遊ぶこともできます。

【参考】
・Azuma and Okuno (1987). A. Azuma and Y. Okuno, Flight of samara, Alsomitra macrocarpa. J. Theor. Biol. 129 (1987), pp. 263–274. 
草木図譜|アルソミトラ・マクロカルパ
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