更新日 : 2013-12-01 09:28:23

光を反射しない蛾(ガ)の眼、モスアイ

なにがすごいの?

蝶と蛾(ガ)はりん粉で覆われた翅を持つ鱗翅目(りんし目)に属する昆虫ですが、その違いは、蝶は主に日中に活動するのに対し、蛾の殆どは夜行性で夜に飛ぶことができる点です。

夜でも飛べる蛾の秘密の鍵は、目の構造にあります。
蝶も蛾も六角形の小さな目(個眼)が沢山集まってできる複眼を持っていますが、蛾の複眼の表面には沢山の突起でできた凸凹構造をしています(写真2)。

この突起は300nm(n=ナノは10億分の1)と、特別な顕微鏡を使わないと見ることができないほど小さな微細構造で、モスアイ構造(蛾は英語でモス)と呼ばれます。

モスアイ構造は、外から眼に入ってくる光を何度も屈折させて、光を反射させない仕組みになっています。

蛾は周囲と溶け込んで自身をカモフラージュするために、モスアイ構造によって月の光の反射を抑え、天敵から身を守っているのです。
また、太陽光の百万分の一の明るさしかない月の光は、蛾にとって唯一の方角を教えてくれる大切なコンパスです。

この微量な光を効率的に眼の奥に取り入れるために、蛾は光を反射させないのです。

どうやって役立てるの?

夜行性の蛾に頼って夜花を咲かせる植物も多くいます。
(C) s8
光を反射しないモスアイ構造をヒントに、写り込みのないテレビの画面やコンピュータのスクリーンを作ることができるかもしれません。

そうすれば、長時間画面を見ていて眼が疲れることもありません。

どんな研究をしているの?

モスアイ構造について研究されました。蛾の複眼は、200nmの六角形の突起(個眼)が300nm間隔で規則正しく並んで構成されています。
この突起と突起の幅(ピッチ)は、光の波長よりも小さいためにこの突起を認識できず、空気からこの突起に当った光は透過するのです。

屈折率が徐々に変化する膜があるのと同じように反射は防ぐことができます。
また、モスアイ構造は、入ってくる光の入射角度に関わらず、幅広い波長にわたって光の反射を抑えることも分かりました。

どんな技術開発ができるの?

モスアイ構造は、従来の反射防止膜では反射してしまった夜の照明などによる不快な眩しい光(グレア)も、阻止することができます。
モスアイ構造による反射、グレア防止は、テレビやコンピューターの画面、ガラス窓の表面など広範囲で使用することができるでしょう。



また、モスアイ構造は、太陽電池の光吸収率を上げるため、反射防止膜としても利用されることが期待されています。

このようにテキスチャー処理を施された太陽電池は、反射がなく、ブラックセルと呼ばれています。



【参考】
Nature 244, 281 - 282 (03 August 1973) Reduction of Lens Reflexion by the "Moth Eye" Principle、P. B. CLAPHAM & M. C. HUTLEY
Insect Orientation to the Natural and Artificial Light. Mantaro HIRONAKA* and Takahiko HARIYAMA J. Appl. Entomol. Zool. 53: 135–145 (2009)
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