更新日 : 2013-06-11 09:11:41
病原菌から身を守るアフリカツメガエルの皮膚
なにがすごいの?
息継ぎ以外はほとんど水中で過ごすアフリカツメガエルは南アフリカ出身ですが、飼育が他のカエルよりも容易であることから実験用にも飼育されています。
小児科医であるザスロフ博士は、毎日のようにアフリカツメガエルの手術をおこなっていました。
ある日、博士は特に消毒をしていないカエルの手術跡が、きれいに治っていることに気づきました。
このことを不思議に思ったザスロフ博士は、アフリカツメガエルの皮膚から「マガイニン」という抗菌性のペプチド(アミノ酸がつながったもの)を発見しました。
昆虫ではこのような物質があることは分かっていましたが(セクロピアサンは細菌に感染しても平気)、脊椎動物では初めての発見でした。
「マガイニン」は体内に菌や細菌が侵入してきたときにカエルの皮膚で必要に応じて生産され、菌や細菌の細胞壁を壊すことで細菌をやっつけ、細菌の感染から身を守ります。
マガイニンには細菌の細胞壁に含まれる成分を溶かす働きがあるのです。
細胞壁…私たち動物の細胞には存在しませんが、植物は細菌の細胞には細胞壁とよばれる外側の固い膜があります。
細菌の細胞壁が壊されると、細菌は死んでしまいます。
どうやって役立てるの?
薬品だけでなく建築業においては、木材の腐敗を防ぎ素材を長く使えるようになるかもしれません。
また、お風呂や浴室のタイルの、カビ防止に役立つ素材が開発できるかもしれません。
どんな研究をしているの?
「マガイニン」のアミノ酸配列が明らかになり作用機構や構造活性について調べられた結果、様々な微生物に活性を示すこと、毒性が低いこと、そして耐性菌を生じにくいということが分かりました。
このような「マガイニン」の優れた特性をいかした医薬品の開発が進められています。
どんな技術開発ができるの?
現在の医療では抗生物質が効かなくなる(耐性ができる)という問題が起きており、新しい抗生物質の開発が求められています。
アフリカツメガエルの「マガイニン」をはじめとした自然界に存在する(天然の)抗菌性のペプチドが次々と発見され、それらを組み合わせて使用することで抗菌力がさらに向上するという治療法が研究されています。
【参考】
・Michael Zasloff, Antimicrobial peptides of multicellular organisms, Nature, 415, 389-395 , 2002