更新日 : 2013-10-15 19:18:32

オオオニバス、水の中の力持ち

なにがすごいの?

南米アマゾン川原産のオオオニバスは、世界一大きな葉をつけるスイレン科の植物で、日本の温室でも観賞用として栽培されています。
葉の直径は2mを越すものもあり、子どもが乗っても沈まないほど水面にプカプカ浮くので、夏にはオオオニバス試乗会が植物園で開催されます。

この大きな葉の浮力の秘密はどこにあるのでしょうか?
それはオオオニバスの葉の裏を観察するとわかります。
葉の裏にはまるでクモの巣のように張り巡らされた太い葉脈があります。(写真2)
この頑丈な葉脈の構造が骨組みになることで巨大なオオオニバスの葉の重さを分散し、水面に浮く巨大な葉を支えているのです。

また、水の中には、オオオニバスの葉の中央から水中の茎まで、10m程の長さの葉柄で繋がっています。
この葉柄はストローのように中が空洞になっていて、空中の酸素を根まで送るパイプの役割を担っているのです。

どうやって役立てるの?

オオオニバス、水の中の力持ち-「どうやって役立てるの?」画像
(C) Carrol
オオオニバスの浮力の秘密である頑丈な葉脈と長い葉柄の構造を利用して、建築物や工業製品の補強構造を強化することができるかもしれません。

どんな研究をしているの?

オオオニバス、水の中の力持ち-「どんな研究をしているの?」画像
日本の大学では、オオオニバスの葉に着目し,葉脈構造が持つ浮力の発生機構について研究しました。
その結果、葉脈の高さは葉の中心に近づくにつれ直線的に増加すること、幅は分岐と分岐の間でほぼ一定であること、また葉脈が剛性の高いこぶ状部と外皮で、内部の気泡を多く含むスポンジ部分を包み込んでいることがわかりました。

どんな技術開発ができるの?

1851年、ロンドンで世界初の万国博覧会が開催されました。
会場となったのはジョゼフ・パクストンによって設計されたクリスタルパレスです。
パクストンはアマゾンから来たオオオニバスの栽培を初めて成功させた優秀なガーデナーでしたが、建築家としても才能がありました。

二つの才能を持ち合わせた彼が設計した建物とは、一体どんなものだったのでしょうか?
パクストンは、幅約563m、奥行き約138m、幕張メッセとほぼ同じ大きさの大温室のような建物を設計しました。
そこで参考にしたのが、オオオニバスの巨大な葉を支える葉脈の構造と葉柄です。
パクストンはまず、植物のエネルギー源である、太陽の光がいっぱい入る総ガラス張りの大温室を考案します。
30万枚ほどのガラスを、オオオニバスの葉脈のように交差した鉄筋の支柱に埋め込みました。
そして屋根を直接支える骨組みの部分に、オオオニバスの葉柄のようなパイプ状の鉄柱を使用しました。
こうすることによって、骨組みと鉄柱が、雨水を集めて流す雨どいとしての役割も担います。
石やレンガ造りの建物が当たり前だった時代にガラスと鉄筋によって作られたクリスタルパレスは、とても画期的で、多くの人の心を虜にしました。

また、1960年に建設された、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港のジェット機専用ターミナルビルの屋根は、オオオニバスの葉の形にデザインされ、それを支える骨組みにはオオオニバスの葉脈構造が取り入れられました。

【参考】
・The Private Life of Plants by David Attenborough BBC Books
・『水晶宮物語―ロンドン万国博覧会1851』、松村昌家、筑摩書房、2000
・パラグアイオニバスの葉の葉脈構造と機械的性質、小林秀敏
万博公園 早朝観蓮会&象鼻杯(2008)
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