更新日 : 2014-03-01 16:42:35
餌を引き寄せるコガネグモの巣
なにがすごいの?
コガネグモはクモの中でも大きめで種類が最も多く、私たちの近くや熱帯地方にも仲間が住んでいます。
彼らは、大きな丸い網を作り、網の中心で餌となる昆虫が網にかかるのを待ち構えます。
コガネグモの仲間が作る網の中心には、白い太い糸が見られ、足の形と同じようにきれいなX字に見えることもあり、昔から白い「かくれおび」と呼ばれてきました。
実際に、コガネグモの巣の網自体は紫外線をほとんど反射せず、この白い帯だけが紫外線を反射していることがわかりました。
昆虫の目は、私たちの目と違って紫外線をはっきりと見ることができるので、コガネグモの巣にある白い帯が花の模様のように見えるのです。
そして、昆虫達はコガネグモの巣を「花」と勘違いして「巣」に近寄ってくるのです。
どうやって役立てるの?
クモは用途に応じて複数の種類の糸を作り出すことができます。
「かくれおび」の成分となる糸を、人工的に作ることができれば紫外線を反射する丈夫な繊維の開発が期待できます。
どんな研究をしているの?
コガネグモの網だけの場合に比べて、この白い帯があると昆虫(ハエ)捕獲率が1.5倍、白い帯とコガネグモがあれば1.7倍にもあがりました。
この結果からコガネグモの体も紫外線を反射することで、昆虫を呼び寄せていることが分かりました。
どんな技術開発ができるの?
クモは肉食動物なので人工飼育が難しいと言われていましたが、最近はクモの糸を作る遺伝子を蚕の卵に注射して、クモの糸の成分を含んだ「スパイダーシルク」を蚕に作らせる技術が開発され、クモの糸の成分を10%含む靴下の開発が進行中です。
石油を使うアクリルやポリエステルなどの化学繊維と違い、「スパイダーシルク」は石油を使わず体にもなじみやすいバイオ素材として注目を集めています。
【参考】
・C. L. CRAIG et al., Insect Attraction to Ultraviolet-Reflecting Spider Webs and Web Decorations
・Ecology, 71, No. 2pp. 616-623, 1990