更新日 : 2012-11-24 10:43:28
陰のある黒バラ
なにがすごいの?
写真のような黒いバラの花は真っ赤なバラとは違って鮮明さには欠けますが、何か怪しげな人を魅了する色を持っています。
この美しいバラをカメラで写そうとすると、写真2のようにただの赤いバラになってしまいます。これは一体どうしてでしょうか?
実は、赤いバラも黒いバラも同じ赤い色素が花弁に存在しています。
しかし、黒いバラは、花弁の表面を覆う表皮細胞の形がちょうど長い板のようなに細長くできており、ここに光が斜めに当たることで影ができる仕組みになっています。
この影のせいで、黒いバラの花は赤いバラと同じ赤い色素を持っているにも関わらず、私たちの目には黒く見えるのです!
黒いバラの花弁を光にかざして観察してみると、黒と思われた花弁の色も実は濃い赤色だということが分かります。
どうやって役立てるの?
(C)
UN
同じ色素を持つ二つのバラでも、構造が違うことで見た目に違いが生まれています。
黒い色素のない植物の世界で編み出されたアイディアをヒントに、原料を節約して暗い色を表現することができるかもしれません。
どんな研究をしているの?
黒いバラの花弁の構造について研究されました。
植物に黒い色素(動物にとってのメラニン色素)は存在せず、本当の黒いバラはこの世には存在しません。
写真2も限りなく赤濃色に近いバラです。
このバラも赤いバラも、どちらも赤色を出すアントシアニンよばれる同じ色素を含みます。
しかし、黒いバラは、花弁の一番表面にある表皮細胞が垂直に細長く伸張する特徴があり、花弁の斜め上から光が当たった時、表皮細胞の影が大きくなり、花弁の赤色が黒色に見えることがわかりました。
また、アントシアニンの赤い色は、他の色と比べて濃いので、光を通さないこともわかりました。
どんな技術開発ができるの?
黒っぽく見える赤いバラの構造を衣料や材に取り入れることで、構造的に色を暗くみせることができます。
凸凹な構造によってできる影は、視線の位置や明るさによって色の表情が微妙に変わる特別な色あいを作り上げることができます。
【参考】
安田斎、「花の色の謎」,東海大学出版会, 1986