更新日 : 2012-11-24 10:35:49
水滴を離さないバラの花びら
なにがすごいの?
雨が止んだ後にバラの花びらについている水滴は、きれいなバラの花びらをより一層綺麗に見せるものです。
この水滴は、水をはじく性質を持つ
ハスの葉のように、水を引き付ける親水性と水をはじく疎水性をもつ表面の凸凹構造が作り出す超撥水性によって球体の水滴となります。
しかし、バラの花びらにある水滴は、虫が降り立って花を揺すろうと、風が吹いて花を揺すろうと、なかなか落ちることはありません。
花弁効果とよばれるこの現象は、バラの花びらの凸凹に、はじかれた水滴の大きさが上手く落ち着くサイズになっていることで生じ、たとえバラの花束についた水を切ろうと私たちが逆さにして振っても、バラの花びらの表面にくっついて落ちないのです。
どうやって役立てるの?
(C)
Tml5386
水滴の超撥水性と吸着性を併せ持つバラの花びらの構造は、水を水滴にして集める新しいシートとして開発できるかもしれません。
どんな研究をしているの?
同じ微細構造を持つことで超撒水性を示すハスの葉と比べると、バラの花びらの微細構造は少々粗くなっています。
バラの花びらの表面ではじかれた水滴は、サイズの大きい溝(凹)に入れても、小さいサイズの溝には入れません。
この現象によって、水と固体間の界面は高い親水性を示し、水滴がしつこく花びらの表面にくっついているのです。
また、この水滴の大きさが10 µL(1Lの100万分の1)以上になると、水滴の重さと表面張力が抑えられることにより、水滴は落下することも分かりました。
どんな技術開発ができるの?
東北大学原子分子材料科学高等研究機構の下村政嗣教授らは、自己組織化を用いて水滴をはじき、かつ吸着する金属-高分子ハイブリッド構造でできた新しい人工シートを作製しました。
バラの花びらの構造を鋳型として作られたこのシートは、接着剤なしで撥水表面に水滴吸着性を持ちます。
乾燥地や砂漠では作物を育てることが難しく、貧困地域が集中して分布します。
このような地域において、一滴の水又は霧でさえ貴重な水資源となります。
人工シートを設置することで、エネルギー使わずにこうした極わずかな水分を収集し、作物栽培に活用することができるかもしれません。
【参考】
・Lin, F. (2008). "Petal Effect: Two maj Tml5386
・xamples of the Cassie–Baxter model are the "Petal Effect" and Lotus Effect". A superhydrophobic state with high adhesive force". Langmuir 24 (8): 4114–4119.