更新日 : 2012-12-04 22:47:38
傷口を見つけて、素早く塞ぐ血小板
なにがすごいの?
私達の体の中には、血管が全身に張り巡らされていて、心臓と合わせて循環系を構成しています。
もし血管が傷ついて破れたりすると、破れた箇所からの刺激を察知した循環系は、血液中の血小板を送って素早く傷口を塞(ふせ)ぎ、応急処置の「仮止め」をします。
さらに、傷口を塞いだ血小板が信号を発し、集まってきた血液中の凝固(ぎょうこ)成分で「仮止め」の上からさらにしっかりと傷口を塞ぎ、失血を防ぎます。
転んで怪我をした箇所にできる「かさぶた」は、血小板などが固まってできたものなのです。
こうして、血小板のおかげで、私達の循環系は血液が漏れる心配がなく、穴が空いてもすぐに傷口を塞ぐ仕組みを備えているのです。
どうやって役立てるの?
パイプラインにおいて、液体の漏出(ろうえい)箇所を特定し、塞ぐ技術として役立てることができます。
漏洩による環境への影響を最小限に留めたり、メンテナンスにかかる費用を節約したりすることが期待されています。
どんな研究をしているの?
イギリスのアバディーン大学工学部の研究チームは、ヒトの血液中の血小板の働きをヒントに、油送パイプラインの漏洩箇所を見つけ、オイルを「凝固させる」特別なポリマー(重合体)を運送する技術を開発しました。
このポリマーは、パイプを流れる液体の温度や圧力条件に応じて作られます。
パイプライン中を流れる重合体が裂け目に到達すると、裂け目の圧力に引かれて漏洩箇所を圧迫し、仮封を形成します。
重合体には電子タグ(印)が付いていているので、パイプの中を進む清掃装置が漏洩箇所の側を通る時に、穴の場所を正確に感知し、それを技術者へ伝えます。
血小板の仮封が作用し続けている間に、技術者はパイプラインを本格的に修理する仕組みです。
この技術を開発した研究チームはブリンカー・テクノロジーという会社を立ち上げ、北海油田の海上パイプラインで実地試験を行う予定です。
どんな技術開発ができるの?
石油だけではなく、天然ガスや水、化学物質などを運ぶパイプラインにおいても、漏洩の発見・防止システムとして期待されています。