南米の宝石と言われるモルフォチョウは、その青く輝く美しい翅で知られています。
この美しい青い発色はどのように作られるのでしょうか?
その前に、私達が特定の色を認識する仕組みについで簡単に触れておきましょう。
物体には、ある特定の波長の光を反射し、また吸収する性質があります。
例えば、リンゴを見て「赤い」と感じるのは、リンゴが赤色の波長だけを反射して、他の波長を吸収してしまうからです。
私達は、リンゴから反射された赤い波長の光を見ていているだけであり、決してリンゴの表面が赤く塗られている訳ではないのです。
話をモルフォチョウに戻しましょう。
モルフォチョウの青色発色の仕組みは、実はリンゴの発色の例とは全く異なっています。
その鍵は、鱗粉(りんぷん:チョウの翅に触ると付着する粉)の構造にありました。
鱗粉表面には、規則正しく微細なひだのような凹凸を形成しており、ちょうどタンパク質と空気が幾層にも重なった「積層構造」ができます。
光が鱗粉に当たると、一つ一つの層で反射した光は互いに光を強め合ったり、打ち消し合ったりします。
ところがモルフォチョウの場合は、凹凸の間隔が青色光の波長のちょうど半分であるために、反射光が強め合って、上手く青色のみが反射されるようになっているのです。
このように、光の干渉によって発色する仕組みを「構造色」と呼びます。
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永田文男
見る角度や光の強度によって発色が変化する構造色のメカニズムは、車や建造物の塗料や繊維、化粧品などのアパレル分野や、光学ディスプレイに役立てることができます。
構造色による発色は、色素や顔料による発色と異なり、紫外線などにより脱色することがないので、製品を長持ちさせることができます。
また、染料のように染色時に大量の水を使うこともなく、化学塗料のように化学物質を使わずに済むので、環境に優しい発色方法なのです。