更新日 : 2012-12-04 20:23:24
大きな鼻で水分を確保するゾウアザラシ
なにがすごいの?
北アメリカの太平洋岸には100万頭を越えるゾウアザラシが暮らしています。
「ゾウ」とは、ゾウのように大きな鼻を持つことから名づけられました。
ゾウアザラシの雌は岸の上で繁殖する2~3ヶ月間、全く食事や水をとらず、脂肪組織に蓄えている水分だけで生き延びます。
ゾウアザラシの大きな鼻には、水分を多く含んだ組織と粘液で覆われた通路があります。
ゾウアザラシが吸った空気はこの通路を通って暖められて湿気を含み、反対に鼻の通路の表面は蒸散により冷やされます。
一方、ゾウアザラシが息を吐くときは暖かく水分を多く含んだ空気が、この鼻の通路で冷やされて水蒸気は液体になり水として鼻の通路に残ります。この変わった構造の鼻を使った呼吸によって、ゾウアザラシは体から呼吸によって出ていく水分を最小限にしているのです。
どうやって役立てるの?
ゾウアザラシの鼻の構造は新しい冷暖房設備のデザインに活かせるかもしれません。
どんな研究をしているの?
ゾウアザラシの中には最大で92%もの水分を呼吸によって取り戻すことができることがわかりました。(ヒツジの場合は24%)
また鼻の通路の回りの表面積は子供では720㎠なのに対し大人の雌は3140㎠であると推測され、ゾウアザラシは鼻の通路の表面が広いほど水分を効率よく取り戻すことができると考えられます。
ゾウアザラシの鼻の通路の構造は板状になっていて複雑であり、熱と水交換経路のシステムが研究されています。
どんな技術開発ができるの?
冷房装置から出された水を再回収する機器の開発や、新しい除湿機の開発に応用できる可能性があります。
また湿気の多い空気や煙突から出される煙、排気口から水分を集めるシステムが開発できるかもしれません。
【参考】
Huntley et. al., The contribution of nasal countercurrent heat exchange to water balance in the northern elephant seal, Mirounga angustirostris, 113, 1, 447-454, 1984