更新日 : 2014-06-11 22:12:59

免疫作用を兼ね備えたサソリの毒

なにがすごいの?

アフリカにはサソリの中でも最大のダイオウサソリが暮らしています。
サソリは獲物をとるために毒を出すことはよく知られていますが、実はこのサソリの出す毒には菌や細菌の感染を防ぐ機能もあるのです。

毒の構成成分の1割ほどが以前ここでご紹介した他の動物が持っているような抗菌性のペプチド(病原菌から身を守るアフリカツメガエルの皮膚)で構成されていることが分かりました。

このサソリの毒の一部である抗菌性ペプチドである「スコーピン」は有害な菌や細菌の増殖を抑え、マラリアのような寄生虫を撃退します。
「スコーピン」はサソリの免疫システムとして欠かせない役割をしているのです。
※ペプチド : アミノ酸がつながったもの

どうやって役立てるの?

生物内で作られている抗菌性ペプチドは、新しい抗生物質として役立てることができるかもしれません。

どんな研究をしているの?

サソリの抗菌性ペプチド「スコーピオン」は75個のアミノ酸のつながりでできていることが分かり、節足動物の中では最も長い構造を持つ抗菌性ペプチドの一つであることが明らかになりました。

アミノ酸の配列を調べると、以前ここで紹介したセクロピアサンの抗菌性ペプチド「セクロピン」やトンボ由来のディフェンシンなど他の動物の抗菌性ペプチドに似ている配列を含んでいることが判明しました。

また「スコーピオン」は枯草菌と肺炎桿菌に対してとても少ない量で増殖を妨げることが分かりました。

どんな技術開発ができるの?

生物体内で分解できるサソリの抗菌性ペプチドは、新しい安全な抗菌物質として実用化が期待できます。

また従来の抗生物質では増殖を抑えられない肺炎桿菌に効果を示したことから、院内感染の問題解決に役立てることができるかもしれません。

【参考】
Kuhn-Nentwig, L., Antimicrobial and cytolytic peptides of venomous arthropods., Cell. Mol. Life Sci., 60, 2651–2668, 2003
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