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Zina Deretsky, NSF Illustration courtesy of the National Science Foundation
バクテリアの鞭毛モーターが、非常に優れた設計のナノマシン(分子機械)であることは、すでに
ここで触れました。
ところで、バクテリアはどのようにして鞭毛モーターを制御しているのでしょうか?
せっかくの高出力モーターも、自由にオン・オフできなければ、ただの暴走マシンになってしまいますね。
実は、鞭毛モーターを構成するタンパク質の「パーツ」に、車のクラッチ(動力のオン・オフを制御する)の機能を持つ1つのタンパク質が組み込まれているのです。
クラッチが入っている時は、回転するモータータンパク質が、鞭毛を構成するタンパク質であるフラジェリンに繋がっているので、鞭毛に回転運動が伝わってバクテリアは進むことができます。
一方、クラッチが切れている状態では、モータータンパク質と鞭毛を構成するフラジェリンの間に、「クラッチ」タンパク質が割って入る形になります。
モータータンパク質が回転していても鞭毛に回転運動が伝わらないので、バクテリアは進まずに止まっていることができます。
私達が車を発明したのは約100年前ですが、人間が地球に登場するずっと以前から、バクテリアは高度な動力制御の仕組みを備えていたのです。
遺伝子操作技術と組み合わせることで、細菌のような生体由来の材料に、高度な動きを制御できるような形質を発現させたナノマシン・マイクロマシンを作ることができるかも知れません。