更新日 : 2012-11-29 13:54:10
軽くて強い竹
なにがすごいの?
竹は、お馴染みのタケノコからぐんぐん成長し、1年で大人になると成長が止まり、幹も全く太らなくなる植物です。
茎が太くならない草とも、幹が太くなる樹木とも違う、植物の分類上、とても特別な存在な竹です。
竹を横に切ってみると、中心部が空洞のパイプ上になっているのが分かります。
断面を電子顕微観察してみると、内側から外側の方にかけて、繊維(維菅束:水や養分を運ぶ通路)が密に存在しています。
更にこれを拡大してみると、繊維が硬い皮で覆われているのが分かります。
ジュードやこうぞなど他の植物性繊維に見られるような空洞もなく、竹の繊維はとても密度が濃く硬いのです。
幹の中心部が空洞で一見弱そうに見える竹は、このようにパイプ部分に鉄筋のような硬い繊維が点在することで、軽くかつ強いのです。
どうやって役立てるの?
(C)
Jonathan wong
竹は、中を空洞にし、外側のみ伸張させることで、最も早く成長する植物なので、2~3年という短い期間で資材として利用できるようになります。
また竹は地下茎で伸びるために繁殖力が著しく高く、木材資源として豊富に手に入る事も利点です。
竹の強度を活かして新しい繊維が開発されるかもしれません。
どんな研究をしているの?
同志社大学の竹の高度利用研究センターでは、竹繊維を利用した研究が行われています。
竹繊維の表面にある層を羽毛化(ミクロフィブリル化)することによって硬く、からみつきやすい竹パルプを作りました。
そして、従来の竹パルプと、羽毛化した竹パルプの2種類の竹パルプを配合することで、竹繊維より強い高機能な竹繊維を開発しました。
どんな技術開発ができるの?
現在使用されているFRP(繊維強化プラスチック:プラスチックの中に、強化材である繊維を混ぜ、強度を高めた複合材)に用いられる主な繊維はガラス繊維で、鉄よりも強く、アルミよりも軽く、そして錆びないことから、ボートの船底に使用されています。
しかし、この素材はリサイクルしにくく、廃棄にお金がかかることが問題となっていました。
新しく開発した竹繊維のFRPは、ガラス繊維に代わり、環境の付加価値の少ない新しいボートの素材として期待できます。
また、この竹繊維FRPは、軽くて剛性が高い素材が必要とされるスピーカーの振動版(スピーカの音を発生させる部分)として採用されました。
この繊維の素材の中を音が伝わる速さは、従来のスピーカーで使用されている針葉樹パルプ製の振動板に比べて約1.25倍、強度は2倍と非常に早く、強度のある振動版として最適な素材なのです。
【参考】
松下の省エネ技術 | にぎりこぷしのエコの細道 | 竹繊維スピーカ-1 | イズム「ism」 | Panasonic