更新日 : 2013-12-01 09:53:46

ゾウムシにみる、光コンピューター・チップの可能性

なにがすごいの?

ゾウムシ(Lamprocyphus augustus)と外殻の結晶画像(スケールは200マイクロメートル)。
(C) Jeremy W. Galusha, Matthew R. Jorgensen, and Michael H. Bartl, Diamond-Structured Titania Photonic-Bandgap Crystals from Biological Templates, Adv. Mater., 22, 107–110, 2010.
昆虫の中には、タマムシやカメムシのように、構造色の仕組みによって、見る角度によって色がカラフルに変化する金属光沢の外骨格を持つものがいます(以前に、ここで紹介したモルフォチョウの美しい羽も同じ仕組みでしたね)。

ブラジル原産で体長2-3センチのゾウムシ(Lamprocyphus augustus)も、美しい緑がかった玉虫色の外骨格を持っています。
ところが、このゾウムシの外骨格は、どの角度から見てもまったく同じ緑色に見えるのです。

この色の見え方の秘密は、外骨格を形成するキチン質*分子のミクロの世界での並び方にありました。
なんと、ゾウムシを形成するキチン質分子の並び方はダイヤモンド中の炭素原子と全く同じ並び方をしているのです。

ダイヤモンドの結晶は、炭素の原子同士が一本の手で繋がって結晶を作っているために、ある特定の波長の光がどの方角から入ってきても、透過させず反射する性質を持っています。
そのため、ダイヤモンドはどの角度から見ても透明に見えるのです。

生物進化の中で生まれてきたゾウムシは、大昔の地球の火山活動で作られたダイヤモンドと同じ構造を外骨格に持つ、凄い昆虫なのです。

※キチン質 : エビ、カニといった甲殻類や昆虫の外骨格の主成分となる物質

どうやって役立てるの?

ゾウムシのキチン質の外殻の構造は、光学コンピューター・チップを実現するための特殊な結晶の設計に役立つ可能性があります。

外殻のキチン質の分子構造は、ダイヤモンドと同じ構造をしていて、それが光学コンピューター・チップを実現するための理想的な結晶とされるからです。

どんな研究をしているの?

ゾウムシの外殻を構成する分子の立体構造が調べられました。
その結果、チキン質からなる外殻の分子構造は、ダイヤモンド結晶の中の炭素原子の並び方と同じであり、このためにどこから見ても同じ色に見える特性を持つことがわかりました。

ダイヤモンドの構造を実験で再現することは非常に難しく、これまで殆どが失敗に終わってきました。
そこで、ゾウムシの外殻の構造をひな形にして、キチン質の部分を半導体材料に置き換える研究が計画されています。

どんな技術開発ができるの?

現在のコンピューターの心臓部である半導体は、電気信号で演算処理を行っています。
しかし、この方法でコンピューターの情報処理能力を向上させていくのは、いずれ限界が来ると考えられています。

もし、電気ではなく、光を使って演算処理を行うことができれば、現在なら処理に数週間かかるデータを数秒で片付けられるようになるでしょう。

この超高速の新しい未来のコンピューターが光コンピューターで、ダイヤモンドと同じ構造を持つ結晶がその心臓部として期待されています。
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