更新日 : 2014-03-23 17:50:41

人の肺の二酸化炭素除去能力

なにがすごいの?

呼吸のイメージ写真
(C) LunaDiRimmel
私達が生きていくために、呼吸を行って酸素を取り入れ、体内の二酸化炭素を除去しています。
このガス交換を担う器官が肺です。

普段の生活の中で肺の働きを意識する機会は少ないですが、人を含むほ乳類の肺には、陸上で効率的にガス交換を行って、二酸化炭素を排出するための素晴らしい機能が備わっています。
肺の中の構造は、枝分かれして細くなった気管支の先に、小さな丸い肺胞がブドウの房状についており、その周りを毛細血管が取り巻いています。肺胞と血管を隔てる薄い膜は、厚さわずか1マイクロメートルと非常に薄く、二酸化炭素が血液中から肺胞へ速やかに出ていけるような作りになっています。

また、一つ一つの肺胞を広げて全部繋げると、その面積はテニスコートと同じくらいの広さになります。
このために、血管が空気と触れる面積が広がり、ガス交換の効率が高まります。

さらに、血液から二酸化炭素を運び出す補助をする化学物質「炭酸脱水素酵素」のおかげで、二酸化炭素の除去速度は、酵素が無い場合の1000倍にも増加します。

このように、人の肺は二酸化炭素を効率良く除去するための、様々な仕組みを備える凄い器官なのです。

どうやって役立てるの?

工場や火力発電所から排出ガスから、二酸化炭素を分別・除去する技術として役立てることができ、環境対策にもなります。

どんな研究をしているの?

アメリカでは、国内総電力の約半分を石炭火力発電でまかなっており、発電過程で排出される二酸化炭素量を減らして、「クリーンな」石炭発電を可能にする新技術の開発が急務となっています。

カルボザイム社は、人の肺の持つ二酸化炭素除去機能をヒントに、触媒機能を持たせた人工膜フィルターを開発し、排煙中の二酸化炭素を90%以上除去することに成功しました。

どんな技術開発ができるの?

排煙ガスから二酸化炭素を分離・除去できても、それをどこかで貯留しないことには、結局大気中に二酸化炭素が排出されてしまうことになります。

ところで、自然界では貝のような生物からも炭酸脱水素酵素が見つかっています。
彼らは二酸化炭素を環境中(水中)から除去するだけでなく、石灰石に変えて殻や骨格の形成に利用しています。

このような機能は、除去後の二酸化炭素を固体化合物の形で貯留する技術のヒントになるかも知れません。
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