更新日 : 2012-11-24 18:00:07
動く珪藻が出す繊維
なにがすごいの?
珪藻は単細胞(1個の細胞で体が成りなっている)生物で、湖や川、海など世界中の水中に暮らしているプランクトンの一種です。
珪藻は植物のように光合成をする(太陽の光からエネルギーを作る)ことができ植物性プランクトンと呼ばれていて、酸化ケイ素という物質でできている殻に細胞が入っています。
殻の形態が羽のように左右対称に広がる羽状珪藻のなかには殻に縦溝が入っていて、そのすき間から接着性の毛を物体の表面に出して、その毛に沿って動くことが出来る仲間がいます。
この接着性の毛は珪藻と、表面を強力につなぎ珪藻はゆっくりとすべるように表面を動くことができます。
自由に動く珪藻は光が当たっていると活発に動き、効率的に光合成を行うことができます。
どうやって役立てるの?
動く羽状珪藻が出す接着性の毛は、私たちの新しい接着剤や衣料の繊維の開発にヒントを与えるかもしれませんね。
どんな研究をしているの?
珪藻の滑走運動は種類や環境によっても少しずつ異なり、詳しいメカニズム研究が進められています。
動くスピードは1秒間に1~25μm(0.001mm~0.025mm)と非常にゆっくりです。
動く羽状珪藻の縦溝の内側周辺には粘液物質を含む多くの顆粒が観察され、繊維状に放出されることが分かりました。
その一端は珪藻の細胞膜状に残り、もう一端は移動する表面にくっつき珪藻を表面に固定させながら移動するのです。
珪藻が出す繊維はプロテオグリカンという長い多糖鎖がついたタンパク質であり珪藻を表面に固定する力が強いと考えられています。
どんな技術開発ができるの?
プロテオグリカンは、タンパク質と糖鎖が共有結合という強い結合で結ばれている物質で私たちの皮膚や軟骨などの成分でもあります。
またその繊維構造はコラーゲンと同様に肌をきれいに保ちます。
現在はサメ軟骨から抽出・生成したプロテオグリカンが化粧品の材料になっていますが、人工的なプロテオグリカン合成の技術開発も進められています。
【参考】
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真山茂樹、藻類の滑り運動(PDFファイル)
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online 多仁誌:珪ケイ藻ソウ