更新日 : 2013-09-12 08:11:52
ウジが作る細菌特効薬
なにがすごいの?
(C)
Kazuyoshi Ide
ハエの幼虫であるウジは、排泄物や腐敗物を食べて育ちます。
私たち人間からすれば、ウジは細菌でいっぱいの、不衛生な環境で生きていますね。
でも、不衛生な環境だからといって、ウジは病気になったりしません。
なぜでしょうか?
その秘密は、ウジの体内で分泌される抗菌性タンパク質「ザルコトキシン」にありました。
このザルコトキシンは普段はウジの体内に存在せず、ウジが細菌に感染した時に直ちにウジの体内で作られます。
カブトムシの幼虫が分泌する「ディフェンシン」と同様に、ウジも自分で作った抗菌タンパク質を分泌し、細菌を殺すことで自分の身を守っていたのです。
その殺菌力は非常に強力で、1ミリグラムの1万分の1というごくわずかな量で、細菌類を殺すことができるのです。
短時間で作られ、わずかな量で効き目は絶大。
ウジは素晴らしい細菌の特効薬を持っているのです。
どうやって役立てるの?
ウジの幼虫が作り出すタンパク質「ザルコトキシン」の持つ強力な殺菌力を利用して、新しい抗生物質として役立てることができます。
私たちが細菌に感染したときに、ザルコトキシンが退治してくれるかもしれません。
どんな研究をしているの?
ザルコトキシンは、植物に被害をもたらす病原菌にも殺菌効果があることがわかっています。
しかも、健康な植物の細胞には全く悪い影響がないのです。
この性質を利用して、新しい農薬を作りだそうという研究が進められています。
また、ザルコトキシンの性質を遺伝子に組み込んだ、病気に強い遺伝子組み換え植物の開発も進められています。
どんな技術開発ができるの?
ザルコトキシンは、微量で強力な殺菌効果を持っていますが、動物の培養細胞や健康な植物細胞には何の悪影響も及ぼしません。
害を及ぼす細菌だけを選択的に殺しているのです。
この性質を利用した、新しい抗生物質や農薬の開発が期待されています。