更新日 : 2013-09-12 08:01:49
熱湯の中で生きる生物
なにがすごいの?
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大島泰郎
私達人間の体は、37度前後の体温を保っていて、そのくらいの温度で一番効率よく働く仕組みになっています。
体温が高温になると、私達の体はうまく働かなくなるため生きていくことができません。
私達の体をつくる仕組みが熱によって壊れたり働かなくなったりするためです。
しかし地球上には、熱い温泉が湧き出している泉源など、非常に高い温度の場所に住んでいる生き物がいます。
その多くは細菌で、なんと80度や100度を越える熱水の中で生きている細菌もいます。
好熱菌、超好熱菌などと呼ばれるこれらの細菌は、とても高い温度の中でもきちんと生命活動を維持していくことができます。
熱に強いタンパク質や体の仕組みを持っているために、このような場所でも生きていくことができるのです。
どうやって役立てるの?
好熱菌の体の仕組みから熱に強いタンパク質の作り方を学ぶことで、耐熱性のあるワクチンや薬を作ることができます。
どんな研究をしているの?
元東京薬科大学生命科学部教授の大島泰郎先生が、DNAやタンパク質、膜脂質など、生き物の体をつくっている材料の耐熱性に関する研究をされています。
特に現在は、高温の堆肥の中で暮らす好熱菌群に注目し、微生物による有機物の分解処理に関する研究に力を注いでいらっしゃいます。
どんな技術開発ができるの?
人工的にDNAを複製するためには、DNAの二本鎖を一本ずつバラバラにするために、94℃以上の高温の状態にする必要があります(PCR法)。
1988年、このキャリー・マリスのPCR法に、好熱菌が持つ耐熱性のDNA複製酵素を使うことをシータス社の研究グループが思いつきました。
このアイディアによって、人工的にしかも簡単に遺伝子を複製することができるようになり、この研究はサイエンス誌にも掲載されました。
【参考】
・Saiki et al. Science, Jan 29;239(4839):487-91, 1988. Primer-directed enzymatic amplification of DNA with a thermostable DNA polymerase.