更新日 : 2013-09-13 07:58:33

セクロピアサンは細菌に感染しても平気

なにがすごいの?

アメリカの森には日本のヤママユガの仲間、セクロピアサンという蛾が住んでいます。

セクロピアサンは、セクロピンという物質をつくりだします。
このセクロピンは、私たちが風邪をひいたときに使う抗生物質と同じ役割を持ちます。
セクロピアサンは、自分自身で抗生物質をつくっているので、もちろん薬の副作用の心配もありません。
必要に応じてセクロピンを作り出し、自分の体を病原菌から守るのです。

セクロピアサンは細菌の攻撃を受けると、細菌の細胞膜を破壊し、細菌が体内で増え続けることを防ぐのです。
細胞膜そのものを破壊するので、何度も抗生物質を使うことで菌が強くなって(耐性を持つと言います)、薬が効きにくくなることもりません。
さらにセクロピンは、ケガをしたときにも早く治るような働きをもっています。

どうやって役立てるの?

現在のカビとり剤は、強い化学物質でできていますが、お風呂などの新しい安全な防カビ剤として利用できる可能性もあります。
私たちの体内に細菌が入ってきたときにも、セクロピンが細菌を効果的に破壊してくれれば、副作用を起こさない薬としても有効です。

どんな研究をしているの?

セクロピンが、セクロピアサンの体内でどのように合成されているかについての研究が行われています。

またセクロピンの遺伝子配列を解読し、37個のアミノ酸でできたタンパク質であることが分かりました。
現在では、このタンパク質の機能や構造についての研究が盛んに行われ、セクロピンを人工的に実験室で合成することに成功しました。

また、セクロビンは非常に多くの細菌に対して、効果がある物質であることも分かりました。

どんな技術開発ができるの?

医薬品業界では、私たちにとっての新しい種類の抗生物質としての技術開発が期待できます。

同じ抗生物質を使い続けると、薬が効かなくなってきます。
細菌も、その薬に対して強くなってくるのです。
そうすると、私たちは新しい抗生物質を開発しつづけなければなりません。
セクロピンが人間にとっても、薬として有効であることが期待されます。

また農業の分野では、セクロピンを合成できる植物を遺伝子操作により開発することで、病害に強い農作物が作れるかもしれません。
実際にイネやムギなどの病害の原因となる細菌に対しての、人工的に合成されたセクロピンの効果が研究されています。

【参考】
生物研(農業生物資源研究所)|平成5年度 研究成果情報(蚕糸・昆虫農業技術研究所)|カイコセクロピンBの植物病原細菌に対する増殖抑制効果

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