クマムシは無せきつい動物(背骨のない動物)の一種で、「ムシ」という名前が付いていますが、昆虫の仲間ではありません。
体長は1ミリメートル以下と非常に小さく、顕微鏡でなければ観察できません。
陸上にも海中にも生息しており、熱帯、温泉、深海、さらには北極など世界中の様々な場所から見つかっています。
このクマムシがスゴイのところは、生きていくのに都合が悪い環境になると、体内の水分を極限まで減らしてしまい、代わりにトレハロースという糖の一種を体にめぐらせて、乾眠(かんみん)と呼ばれる休眠状態になってしまう点です。
こうなると、クマムシは世界最強の動物です。
マイナス272度の極寒におかれても、体が凍ってしまうことがありません。
体内にめぐらされたトレハロースによって「過冷却」という現象が起き、細胞が凍結してしまうのを防いでいるからです。
150度を越す温度でもへっちゃら、宇宙と同じ真空状態や6000気圧もの高圧環境、人の致死量を越えるX線を当てても生きています。
また、乾眠状態のクマムシは、数年から10年間を生き延びることができ、水を与えてやると、復活してまた活動を始めることができます。
クマムシの体が元に戻るのを、体内のトレハロースが助けているのです。
クマムシの例からもわかるように、トレハロースには細胞やタンパク質を凍結や乾燥から守る働きがあります。
この性質を、細胞を凍結乾燥によって長期保存させる技術に応用することができれば、医療や食品分野で役立てることができます。
人の細胞を長期凍結乾燥保存することができるようになるかも知れません。
技術として確立されれば、クローン技術と組み合わせることで、細胞や臓器の移植といった医療分野で役立つことが期待されています。
また、食品に応用することが出来れば、私たちは新鮮な食材をいつでも冷凍庫から出せるようになるかも知れません。
【参考】
・「YOKODUNA PUROJECT~クマムシの研究~」
・
Kumamushi Genome Project(英語)