キツツキが堅い木の幹に穴をあける時には、1秒間に20回も嘴(くちばし)で木をつつきます。
その時キツツキが1回に受ける衝撃は、時速25キロメートルで壁に頭をぶつけるくらいの大きさです。
けれども、キツツキは頭痛や脳震盪(のうしんとう)を起こしたりはしません、何故でしょう?
その秘密は頭の構造とつつき方にあります。
キツツキの脳は、3重のクッションで衝撃からがっちり守られています。
クチバシの根本に発達した筋肉と大きくて厚い頭蓋骨の中のスポンジが、頭に伝わる衝撃を吸収します。
さらに、キツツキの長い舌の付け根は後頭部にあり、頭蓋骨をぐるりと取り囲むクッションとして脳を守っています。
木をつつく時は、木の幹を掴む足を支点にして、梃子(てこ)の原理で体全体を一本のハンマーようにしてクチバシを振り下ろしています。
このとき、太い尾羽は体を固定する留め具の働きをするとともに、バネのように働いて振り下ろすクチバシに勢いを与えています。
また、木を垂直につつくことも、脳への衝撃を抑えることに役だっています。
サッカーのヘディングのように、ボールを額の適切な位置に当てれば頭に響く事がないのと同じ原理ですね。
このように、頭の3重ガードと体全体を使った上手なつつき方で、キツツキは振動と衝撃から脳を守っているのです。
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石田健 博士(東京大学大学院農学生命科学研究科)
工事現場で使う削岩機やドリルなどの機械は、振動と衝撃が発生するので使う人の体に大きな負担がかかります。
キツツキの振動や衝撃を吸収する仕組みを、安全で負担の少ない機械の開発に役立てることができます。
また、登山用のピッケル、地震の揺れを吸収する建物のつくり、杖などにも応用できます。