更新日 : 2013-08-23 19:05:21
ジャイアント・ケルプに学ぶ新しい波力発電
なにがすごいの?
私達の食生活でお馴染みのヒジキやワカメ、あるいはコンブといった海藻は、海底や岩に固着してそこから「葉」を広げ光合成によって生活しています。
流れが速く、荒れる海域に適した生活スタイルなのです。
カリフォルニアのモントレー湾やオーストラリアのタスマニア島の近くの海には、全長数10メートルから100メートルまで成長する巨大な海藻が生息しています。
なんと1日に数10センチも成長すると言われ、「ジャイアント・ケルプ」(巨大な昆布という意味)と呼ばれています。
まるで海の中の森のようですね。
ジャイアント・ケルプの一つ一つの「葉」の付け根の部分の間には、気体がつまった小さな「浮き袋」がついており、たくさんの浮き袋を持つことで、巨大な海藻が海中で倒れてしまわないように支えています。
また、この「浮き袋」のおかげで、「葉」は海流に沿ってひらひらと大きく広がるので、海藻はたくさん日光を浴びて光合成を行うことができます。
どうやって役立てるの?
オーストラリアにあるバイオパワーシステムズ社は、海中でゆらゆらと揺れる海藻の動きに着想を得て、「バイオウェーブ」という波力発電装置を開発しました。
全高25メートルの装置であるバイオウェーブは、海流に合わせて「浮き」の部分が揺れて、装置の根本に取り付けられたタービンを回転させる発電します。
潮流による揺れを回転運動に代え、それによって発電機を駆動しているのです。
回転運動を利用するといっても、風力発電のようにプロペラ型タービンが回る訳ではないので、海洋生物を傷つけてしまうことはありません。
回転するタービンの部分は装置の中に入っているので、海洋生物がぶつかってタービンを傷めることもありません。
また、悪天候などで波が激しい時には、自動的に浮きの部分が海底面と平行になるように横倒しになり、装置に過剰な力がかかって故障することを防ぎます。
bioWAVE | BioPower Systems(英語 動画あり)
どんな研究をしているの?
バイオパワーシステムズ社は、風力発電などを手がけるハイドロ・タスマニア社と共同で、実際にタスマニアのキング島の海底に全高25メートルのバイオウェーブを設置して、発電実験を行っています。
将来的には、バイオウェーブをキング島の電力網に繋いで、電力を供給することが計画されています。
どんな技術開発ができるの?
原油価格の高騰や環境問題への社会的意識の高まりから、今までのエネルギーに変わる新しい再生可能なエネルギーとして、風力発電とともに波力発電が注目を集めています。
周囲を海に囲まれた日本なら、このバイオウェーブのような波力発電を活用できる可能性があります。
現在のカリフォルニア湾で見られる「ジャイアント・ケルプの森」のように、「バイオウェーブの森」が日本のあちこちの浅海で見られるようになるかも知れませんね。