オオサシガメはカメムシの一種で、ダニや蚊と同じように吸血して生きている昆虫です。
普段はネズミの巣に生息し、子供の頃からネズミの血を餌としています。
ネズミがいないときは、私たち人間の血を吸うこともあります。
普通、血液は血管が傷ついた時にはすぐに固まって流出を防ぐ、凝固作用を持っています。
その作用が無ければ小さな傷からも血は流出し続け、死んでしまいます。
ところが、オオサシガメは、どんな種類の血を吸っているときも、その凝固作用ははたらきません。
オオサシガメは、どのようにして動物から、たっぷりと血を吸うことができるのでしょうか?
その秘密は、彼らが吸血する時に分泌する唾液にありました。
この唾液には、血液を固まらないようにする「プロリキシン-s」というタンパク質が含まれているのです。
オオサシガメは、吸血する前に自分の唾液を相手の血管に注入することで、血が固まるのを防いでいます。
さらに、このプロリキシン-sは、血管を弛緩させて広げる働きも持っており、傷ついた血管が収縮して血液の流れが弱まるのを防いでいます。
一つの物質が、「血液の凝固阻止」と「血管の弛緩」という二つの働きをすることで、血管が広がり血液が流れ続け、オオサシガメはより容易に吸血することができるのです。
オオサシガメ唾液腺から抽出したプロリキシン-sは、脳梗塞の他にも同じ血栓症である心筋梗塞や、あるいは高血圧の治療薬となる抗凝固剤として役立つことが期待されています。
またオオサシガメの血管を弛緩させる仕組みは、脳の病気の後遺症に多い「痛み」「筋肉のかたまり」を和らげる薬としても使えるかもしれません。
【参考】
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三重大学|医動物・感染医学教室