更新日 : 2013-10-22 06:34:19
いつでも快適なシロアリの巣
なにがすごいの?
(C)
Micheal
サバンナ地帯に住むシロアリは、数十年もの長い年月をかけて、高さ6~7メートルの土の巣を作ります。
サバンナ地域の気温は、昼間50℃、夜は0℃と温度差がとても激しいのです。
こんな厳しい環境の中でも、巣の中の温度は、いつも30℃ぴったりに調節されています。
では、どうやって、シロアリは巣の中をいつも同じ温度に保っているのでしょうか?
いくつかのメカニズムがありますが、その秘密の鍵を握っているものの一つは、巣の材料である土の隙間(団粒構造)にあります。
土には目には見えないくらいの10億分の数メートルという、小さな隙間がたくさんあります。
このバクテリアよりも小さな隙間は自動的に湿度をいつも一定に調整する機能を持ちます。
湿度が高いと湿気を吸い水として隙間に貯め、低いと湿気(ガス)として空気中に放出することで湿気を調節するのです。
また、大量の隙間(空気の層)が熱を遮断する役割をし、湿度の変化を抑えているのです。
どうやって役立てるの?
近年、家庭内の消費電力は増加の一途をたどっており、大きな問題となっています。
また、その内訳では、エアコンが最も大きな消費となっています。
シロアリの巣が持つ、温度・湿度を一定に保つ機能を持つ仕組みを住宅に応用すれば快適な空気環境をつくる「無電化エアコン」ができます。
それは、消費エネルギー削減にも繋がります。
どんな研究をしているの?
シロアリの巣の材料である土を、そのまま素材として私たちの生活に取り入れるのは難しい事です。
温泉地帯で岩石ができるメカニズムを利用すれば、土の構造を壊さないでタイルのように固めることが可能です。
土に少量の石灰を加え、タイルのようにプレス成型し、150℃程度で数時間蒸すことで、土の構造を維持したまま固化できます。
焼かないので製造時のエネルギーの消費量は、セメントの約半分、二酸化炭素(CO2)の排出量はセメントの約1/4と少なく、省エネや環境負荷の抑制に貢献できます。
壁や床に、このような素材を使用することで、温度や湿度が調整される無電源エアコンを実現できます。
すでに実用化されていますが、さらに今住宅で問題となっているVOCと呼ばれる化学物質・臭いを吸着・分解する新しい機能を持たせる研究が行われています。
どんな技術開発ができるの?
無電源エアコンは実際に一般家庭で使われはじめています。
そして、家の室内の湿度や温度がほぼ一定になることが確認されました。
エアコンを使わないので、無理することなく二酸化炭素の排出量も減らせます。
また素材の中の小さな穴は、空気中のガスや匂いも吸着するので、室内の空気をきれいにすることもできます。
【参考】
・石田秀輝、『自然に学ぶ粋なテクノロジー なぜカタツムリの殻は汚れないのか』、 DOJIN選書、(2009)、19-27