更新日 : 2013-07-17 08:13:15
どんなに群れてもぶつからない
なにがすごいの?
「秋は夕暮れ」、清少納言が枕草子に書いたように、夕暮れ時に家に帰って行くガンの群れを見ると風情を感じます。
鳥の群れは、美しいV字型の雁行を描いたり、何かをきっかけにいっせいに飛んだりと、鳥達はお互いにぶつかりもせず、集団で行動します。
水族館の大きな水槽ではサンマやアジなどの魚の大群を見ることができます。
無数の魚の群れが、互いに衝突することなく水槽の中を泳ぎ回っています。
これらの群には指揮をとるリーダーのような者は存在しませんし、私達のように言葉でコミュニケーションをとっている訳でもありません。
実は、群れを形成する個体が、周囲環境を認識し、三つの行動ルールに従うだけで一糸乱れない群れが生まれるのです。
魚や鳥がこれを理解して行動しているわけではありませんが、一匹では適わないような強い天敵から身を守るために群れを作ると同時に、周囲を警戒する役割を分担して一匹ごとの負担を減らしているのです。
どうやって役立てるの?
海を泳ぐ魚の群れ、アリの行列、畑を飛ぶバッタの大群、そして空を飛ぶ鳥の編隊など、大きな群れになると数百、数千もの個体が集まりますが、どんなに大きな数になろうと整然とした群行動を行います。
「複雑は、単純の集まりである」という名言のように、個々の知能は単純であるのに、それらが集まり群れを形成することで非常に高度な知能を発揮することを群知能と呼びます。
これをヒントにコンピューターの新しい解析分野で役立てることができるでしょう。
また、新しい交通システムなどの開発にも役立つかもしれません。
どんな研究をしているの?
アメリカのアニメーションプログラマーが、鳥の群れをコンピューターで再現できないかと考えました。
鳥の群れを観察した結果、そこにはリーダーが存在せず、それぞれの鳥は何か簡単な規則に従っている、と彼は考え、三つのルールに辿り着きました。
この三つのルールで作った鳥のシミュレーションモデル「ボイド」(birdoid、鳥もどきという意味)は、見事に群れを再現しました。
これはその後、映画「バットマン リターンズ」で、コウモリの群れとペンギン軍団の動きをCGで再現する時にも使用されました。
三つの行動ルールとは、エリアごとに見られるもので、次のように決まっています。
ルール1 : ある距離よりも近くに他の鳥が来ないように飛ぶ
ルール2 : 最も近い鳥までの距離を一定に保とうとする
ルール3 : 一定距離にいる鳥と並行して飛ぶ
どんな技術開発ができるの?
群知能を応用することで、コンピューターの分野だけではなく、私達ができないような危険で複雑な作業、例えば、未知の惑星を探査する機械や、足の踏み場の悪い災害現場で作業する人命救助ロボット、林業ロボット等で利用することができるでしょう。
実際にアメリカでは軍事用無人飛行機の飛行に成功しています。
また、日産自動車は、ぶつからない車の実現に向け、魚群をヒントに、群走行しながらお互いがぶつからないロボットカーを開発しました。
【参考】
・
NISSAN | Nissan EPORO Robot Car "Goes to School" on Collision-free Driving by Mimicking Fish Behavior(英語)
・
ロボットカー EPORO | 日産|技術開発の取り組み
・
Project Goose|Boidsとは
・
[新潟国際情報大学] 中田豊久 - 研究紹介|ボイドアプレット