更新日 : 2013-10-19 08:48:36
くっついたら離れない脚力をもつサバンナのヤブキリ
なにがすごいの?
熱帯や亜熱帯のサバンナに住んでいるバッタの仲間を紹介します。
彼らの名前は英語では「Great green bush cricket」(キレイな緑の低木に住むコオロギ)と呼ばれています。
その名のとおり、緑色で大きめのコオロギのように見えますが、実際には日本でヤブキリと呼んでいるバッタの仲間です。
彼らの足は強い接着力をもち、葉の裏を走り回ることができます。
もちろん、接着剤で葉の裏にくっついているのではありません。
彼らの足には、2つの秘密があります。
1つめは、足のサイズです。
彼らの足の裏はとても大きいので、葉の裏にくっついているときの面積も大きいのです。
足が大きいほうが、葉の裏に安定してくっつくことができます。
私たちの履いている靴も、ハイヒールはかかとの面積が小さいので不安定ですが、スニーカーは歩きやすいですよね。
2つめは、彼らの足には小さなこぶのようなものがついています。
さらにそのこぶの先は細く2、3に分かれて指のようになっています。
それらの「足の指」が葉の面のデコボコをつかんで、彼らは器用に葉の裏を歩き回っているのです。
どうやって役立てるの?
ヤブキリの足は、いろいろな表面に対しても強く接着する力があることが分かりました。
彼らの小さな接着力は、私たちの周りの機械の小さな部品構造に使えるかもしれません。
1cmの10分の1のスケールで物を操作するグリッパー(つかむ)装置などです。
私たちにとっては、新しい微小な接着力を持つ材料として注目され、MEMS(微小な機械装置)の新しいデザイン設計に使えます。
※MEMS 技術はインクジェットプリンターなどですでに利用されていますが、携帯電話やあらゆるポータブル電子機器、自動車や医療分野などでの今後応用される見込みです。
その開発は現在盛んに行われています。
どんな研究をしているの?
ヤブキリが足を葉の表面につけたとき、足と表面の隙間に薄い液体の膜がはられて接着力を強化していることが分かりました。
この膜はシャボン玉の膜のようなものと想像してください。
シャボン玉が丸い形を維持する力が表面張力です。
ヤブキリはこの表面張力をうまく利用して、ぴったりと葉の裏に接着しているのです。
また彼らの足の裏の小さなこぶの部分は、とても柔らかい素材でできていることもわかりました。
この素材の特性について、さまざまな実験が行われています。
【参考】
・M Scherge and S N Gorb, Using biological principles to design MEMS, J. Micromech. Microeng., 10, 359-364, 2000