更新日 : 2013-07-10 17:55:08
くっついたら離れません!~野生のゴボウ~
なにがすごいの?
秋の季節に、原っぱで遊んでいて、衣服に何かの実が沢山くっついていたことはありませんか?
また、犬を散歩に連れていくと、毎日のように犬の体にトゲトゲのある実がついていたことがありませんか?
あれは、いわゆるひっつきむしの仲間、野生のゴボウの実です。
動物の体や人の衣服にくっつく植物の実で、人や動物を使って種を遠くに運ぼうという作戦なのです。
この実は、犬の毛に絡まったら最後、なかなか取れません。
犬の散歩中にこれを不思議に思ったスイス人の発明家、ジョルジュ・ド・メストラルは、その実を持ち帰り、顕微鏡で覗いてみました。
すると、実にはとげが無数にあり、とげの先は釣り針のように曲がっていたのです。
この無数の鉤(かぎ)のせいで、実は犬の毛にしっかりと絡みついていたのです。
どうやって役立てるの?
メストラルは考えました。
「ゴボウが付着する原理をヒントに、2枚の布を密着させれば、ワンタッチで取り外しができる!」
そして試行錯誤の末、1950年代半ばに特殊ナイロン糸を使用して、無数の鉤と輪で構成された面ファスナーを完成させました。
バリバリっとはがすテープ、現在の「マジックテープ」の原型の誕生です。
この技術と特許をベルクロ社が買い取り、現在に至っています。
日本では1960年にクラレがベルクロの技術を使って製品化しました。
1964年に開通した新幹線のヘッドレスカバーに使われたことを契機に、飛躍的に市場が拡大することとなりました。
どんな技術開発ができるの?
日本ではクラレの登録標章“マジックテープ”の名前で有名になりましたが、カバンや靴、洋服など、私たちの身の回りによく利用されています。
一方で、布の繊維が付着しやすく、何度も付け外しすると付着力が低下します。
また、テープを外す時の大きなバリバリという音は、静かな環境では騒音として嫌われます。
ピアノの発表会で、マジックテープを付け外ししたら大迷惑ですよね。
現在は、付け外しの際に音の出ない面ファスナーの開発が進められています。
【参考】
・「自然に学ぶ粋なテクノロジー なぜカタツムリの殻は汚れないのか」 DOJIN選書 石田秀輝 2009