更新日 : 2013-07-06 06:57:45
アワフキムシは泡で快適生活
なにがすごいの?
木の枝や草の茎の一部が泡だらけになっているのを見たことはありませんか?
あの泡は、セミの仲間である、その名もアワフキムシという虫の幼虫が作る「巣」なのです。
幼虫は、一体どうやって泡を作っているのでしょうか。
体長5~10ミリメートルの幼虫は、植物の汁を吸って生きています。
体内で栄養分だけを吸収して、余分な水分は自分の体の周りに排泄してしまいます。
この排泄された水分に、自らが分泌する有機物を溶け込ませて、幼虫は「石けん」を作り出します。
この石けんに、お腹の気門(空気を取り入れる穴)から空気の粒を吹き込んで泡立て、できた粘度の高い泡の固まりを巣にしていたのです。
この泡の巣はとても丈夫で、雨風にさらされたくらいでは吹き飛びませんし、日照りでひからびることもありません。
幼虫が分泌する有機物に、泡立ちをよくしたり泡を壊れにくくしたりする働きがあるからです。
泡の中の空気が断熱材の働きをするので、巣の中にいれば外気の変化から身を守ることができます。
また、アリなどがこの泡の巣に入ってしまうと、石けんの水溶液で溺れて呼吸できずに死んでしまいます。
こうして、泡の巣の中で幼虫は快適に過ごしているのです。
自分の出すオシッコに少し手を加え、再利用して巣にしてしまうなんて、アワフキムシの幼虫は凄いですね。
どうやって役立てるの?
(C)
「自然に学ぶ粋なテクノロジー なぜカタツムリは汚れないのか」 石田秀輝著
アワフキムシの幼虫が作る泡の原理を、私たちの新しい入浴法に応用する事が考えられます。
水に空気を吹き込んで作った泡のお風呂です。
大量の水は必要ありません。
従来の風呂ならばおよそ200から300リットル必要だった水を、6から8リットルと10分の1以下に抑えることが可能になります。
また、泡は空気から出来ていますから、熱い泡を作ってやれば熱を運ぶことができ、体をぽかぽかと温めることもできます。
泡を作るお湯はほんの少しで済むので、エネルギー節約に役立ちます。
さらに、小さな泡がつぶれる時には超音波が発生し、これが汚れを落とす効果があるので、体の洗浄・保温という入浴本来の目的も達成できる可能性が高いのです。
車いすのまま入浴もできるように風呂の構造を工夫すれば、高齢者やハンディキャップを持つ人たちに、新しい入浴のスタイルや楽しみを提供できるかも知れませんし、水圧がかからないので、高齢者にとって優しい入浴方法となるでしょう。
どんな研究をしているの?
現在の技術では、作った泡が10分程度で半減してしまうので、さらに泡を長持ちさせるための改良が行われています。
どんな技術開発ができるの?
泡を利用することで、未来のお風呂は殆ど水と使わない超節水型になるかも知れませんね。
【参考】
・「自然に学ぶ粋なテクノロジー なぜカタツムリは汚れないのか」石田秀輝 著/DOJIN SENSHO