更新日 : 2013-10-17 18:24:46
ミイデラゴミムシの毒霧噴射
なにがすごいの?
(C)
Hiroki Kataoka
ミイデラゴミムシに「ヘッピリムシ」というあだ名がついているのを知っていますか。
あだ名の通り、攻撃されて危険を感じると、防御のために大きな音と一緒にとても臭い霧状のガスを、お尻の先から外敵に向けて一気に噴射します。
噴射液の温度はなんと100℃にも達し、天敵のカエルや鳥に火傷を負わせ、人の手にかかると皮膚を茶色に変色させて、悪臭をこびりつかせるくらい強力な効き目があります。
お尻の向きを変えればどの方向にも噴射できる上、ミイデラゴミムシがその気になれば、数発を連続して噴射もできるのです。
この防御用の毒霧は、とても巧妙な方法でつくられます。
ミイデラゴミムシは、常にお腹に霧を貯めている訳ではありません。
毒液の成分である2種類の化学物質を、それぞれお腹の中で2カ所に分けて貯めておき、危険を感じるとそれらを反応室と呼ばれる部屋に送って、急激に反応させて毒霧を作ります。
そして、化学物質が爆発的に反応する時に発生する熱と圧力を利用して、お尻の先から外敵に向けて高温高圧の霧を一気に噴射します。
毒霧を2種類の化学成分に分けて貯めておいて、必要な時に必要な分だけ反応させて作り出す事で、無駄なく効率よく使うことができるのです。
どうやって役立てるの?
(C)
Eisner, T., and Aneshansley, D. J., 1999. Spray aiming in the bombardier beetle: Photographic evidence Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 96, pp. 9705–9709.
細かい霧を噴射する仕組みを、新しい形の消化器やスプレーとして応用することができます。
また、水を細かい霧状(ドライミストと言います)にして噴射すれば、水が蒸発する時に周りから熱を奪う効果を利用した新しいエアコンとして役立てることができます。
ドライミスト方式によるエアコンは、実際に六本木ヒルズで使われています。2種類の化学物質を混合して噴射する仕組みは、日本国内で使われる消化器の一部で採用されています。
どんな研究をしているの?
ミイデラゴミムシが、どうやって自身の噴射する毒霧の影響から免れているのか、その仕組みを明らかにしようとしています。
どんな技術開発ができるの?
ばねを使わずにシュッと噴射できる、新しいタイプの薬の吸入器や噴霧器、あるいは香水などに応用できるでしょう。
また霧状の消化剤を噴射する、多目的型の自動消化器を開発することができるかも知れません。
噴射する霧の粒の大きさを変えることで、火災による延焼を防いだり、火災そのもの消火したりするなど用途に応じた使い方ができます。
例えば、狭い宇宙船内で火災が起きた時には、船が破損したり酸素が消費されたりする前に直ちに消火しなければならないため、少量の水から霧を作り出して高圧噴射する消火方法がとても有効となるでしょう。