更新日 : 2013-10-15 19:19:14
いつも快適なシロアリの巣~パッシブクーリング~
なにがすごいの?
日本でみられるシロアリと違い、サバンナ地帯に生息するシロアリは、土で作られたアリ塚を巣に暮らします。
以前
ここで紹介したように、昼と夜の寒暖の差が非常に激しいサバンナ地帯にも関わらず、アリ塚の中の温度は常に30℃に維持されているのです!
この秘密の鍵を握っているのは、湿度の調整やガス交換をすることができる土が持っているとても小さな孔、そしてもうひとつは、アリ塚自体の構造にあります。
シロアリの巣の地上に出ている部分は数メートルですが、地下に作られる蟻道と呼ばれるトンネルの長さは、なんと数十メートルにもなります。
現地の人がシロアリの巣の下には水がある事を知っているように、地下に掘られたトンネルの下には地下水があり、その湿った土によってトンネル内は涼しくなっています。
このトンネルは煙突のように地上に出ているトンネルとも繋がり、風が巣内部に入ると冷却され、それと同時に換気も行われます。
こうしてシロアリの巣は自然の力で新鮮な空気を循環させながら一定の温度を保つ、優れた空調設備で快適に過ごしているのです。
どうやって役立てるの?
シロアリの巣の中は、私達の生活ように電気に頼ったりせずに、湿度と温度を一定に保つ素晴らしい空調機能を備えています。
シロアリの巣のように建築的に通風や地中冷熱、そして夜間の放射冷却を利用して冷暖房負荷を低減する方法はパッシブクーリングと呼ばれています。
このシロアリの巣の構造技術をヒントに、快適な住居や倉庫の開発が進められており、エネルギー消費量の削減や全体の効率の最適化を図るための新しい方法となるでしょう。
どんな研究をしているの?
アメリカのある研究者はシロアリの巣に石膏を流し込み、巣の型を取ることで、巣の構造を解明することに成功しました。
その結果、巣の内部の空気の循環の様子と、空気が冷却される仕組みが明らかになりました。
巣の地下には、水気を含んだ土を削り掘って作られたトンネルが張り巡らされています。
風が吹いて外から巣の中へ入ってきた熱気は、このトンネルを通って地下で気化熱によって冷却されます。
また、この風は巣の中で温まった空気を巣の外へ排出します。
空気が地下水で冷却されるのと同時に、蒸発した水によって空気は加湿されますが、それが室内に適度な湿度を与えていたのです。
どんな技術開発ができるの?
シロアリの生息するアフリカ、ジンバブエのハラレ市に完成したショッピングセンターは、外気が40℃を越す灼熱の砂漠に建てられたのにも関わらず冷房設備がありません。
シロアリの巣の仕組みを元に設計されたこのショッピングセンターは、世界で始めて自然冷却の仕組みを応用し、空調にかかるエネルギーを90%抑えることに成功したエコロジカルな建物です。
【参考】
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なぜだろうの研究所 | ムシテックワールド